私たちは、怒りや悲しみ、孤独、劣等感等のさまざまな気持ちを抱えていると「誰に対して」「どんな気持ちが」「どのくらい」あるのか混乱しがちです。その結果、物や関係ない人に八つ当たりしたり、出しやすい相手に頼ってしまったり、うまくいかないのに同じパターンを繰り返してみたり、あるいはどこにも出さずに閉じ込めたりします。
これらは一時的に問題を目の前から排除することにはなりますが、根本的な問題解決にはなっていません。社会で他者と関わるには感情の交流がつきものですので、アンガーを抱えていると、いやな思いをしたり、争いにならないために、次第に自分の感情を出さないようになったり、わかってくれない相手には強引に自分のやり方を通そうとしたりしがちです。
アンガーマネージメントは、混沌とした気持ちを整理したり、状況を客観的に見る力を育てることを通じて、衝動性が高まっても自分で沈静化し適切な表現や問題解決ができるような力を学ぶプログラムです。
アンガーマネージメントの目的は,3つありこれを5課程で学んでゆきます。
1)生理的反応への対応
興奮した身体やこころを鎮静化するために,ストレスマネージメントを学びます。
2)認知反応への対応
混乱しているこころの状態の整理をするために考える力を育てます。
状況を客観的に把握したり,視野を広げたり,先を見通す力を育てます。
3)向社会的判断力・行動力の育成
自分の気持ちや欲求を,適切な方法で表現するソーシャルスキルを学びます。
行動を変えるには、「自分が何をやっているのか」に気づかせることから始めます。 そのためには、「客観的にできごとを見る力」を育てます。自分が繰り返している行動によるメリットとデメリットを整理し、「自分らしく」「適切に」表現するための方法を学んでゆきます。プログラムは講義とロールプレイを組み合わせ、実践的に役立つように組んでいます。 |
健康な児童・生徒を育てるための予防プログラムと、繰り返し不適応行動(不登校、非行、いじめ・暴力等)を行う児童・生徒への治療的プログラムがあります。6回、8回、15回というプログラムがあります。
<学校現場において>
1)予防プログラムとして学級全体に行う場合
2)いじめ・暴力等を繰り返している児童・生徒を個人・小グループで実施する場合
3)対応が難しい児童・生徒を担任している教員に実施する場合
<相談室において>
1)子育てに苦慮している保護者に小グループで実施する場合
2)不登校・発達障害等 自分の気持ちを上手く表現できない児童・生徒に相談室で実施する場合
3)向社会的判断力・行動力の育成
<矯正教育現場において>
1)少年院・少年刑務所・刑務所等の処遇プログラムの一環として
2)保護観察の暴力犯に対するプログラムとして
3)対応困難な対象者に巻き込まれないためのプログラムとして
実施事例については、本田恵子(2010)「キレやすい子どもへのアンガーマネージメント〜段階を追った個別指導とタイプ別事例集」ほんの森出版 を参照してください。
基本の流れは同じですが、対象者の年齢、知的能力、発達障害、情緒の発達状況等に応じて教材やプログラムは変えてあります。
1)小学生は考える力を育てることが中心
小学生でのプログラムは、状況を客観的にとらえる力を育てることを中心とするため、「思考力」「視野を広げる力」「友だちとの関わりの力」を中心に組まれています。
2)中学・高校生は、思春期の心や身体、仲間の変化に適応できる力を育てることが中心
中学校でのプログラムは、思春期の心や身体の発達に伴って生じる様々な変化に対応できるように、「自分の行動パターンの理解」「考え方の理解」「コミュニケーションパターンの理解」を中心に行い、具体的な問題場面の解決方法を学んでゆきます。
3)発達障害の児童・生徒には、本人の行動特性を理解し衝動性を緩和してゆく力を育てる
ことが中心
注意が散漫になったり、こだわりが強い児童・生徒の場合は、ストレスマネージメントや状況をとらえる力を育てること、および自分の特性に合った社会的スキルを学んでゆきます。
4)矯正教育は、本件非行の理解や再犯をしないために必要な具体的なスキルを育てること、
および、生育歴と自分らしさの理解が中心
矯正教育では、非行に至るパターンを理解したり、自分が求めているものを理解することを通じて適切な表現方法や犯罪にならない解決方法を学んでゆきます。
年間を通じて研修会を開催しています。アンガーマネージメントプログラムを実施するには、さまざまな対象者の感情、考え方、行動パターンの理解および適切な表現方法を伝えるスキルが必要になります。基礎研修を受講された上で実施をしてください。また、実施中は、フォローアップ研修やスーパーバイズを受けることを勧めます。 研修会案内
基礎研修を修了された方が教材を購入できます。研修修了証のナンバーを教材申込みフォーマットに記入してください。詳しくは、書籍紹介ページをご覧ください。 書籍
daihyou☆anger-management.jp
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